2015年2月6日金曜日

コラム / 革命は静かに起こる

久しぶりにソウルフラワーユニオンのCDを棚から引っ張り出して聴いた。
いつ聴いても太く長い河のようなエネルギー、有無を言わせぬ説得力。
僕はその流れに揺られながら、ある風景を思い出していた。

ソウルフラワーユニオンのライブを初めて見たときのこと。
時期はあまり覚えていないけど、8年前くらい、場所は梅田のバナナホールだった。
ステージに彼らが登場して、せーの!で音を鳴らした瞬間、体が震えて、いきなり涙が出てきた。 

自慢じゃないけど、僕はライブを見て泣くようなタイプではない。つまらないライブだったら途中で帰るし、泣かせようとする演出や歌詞があったりすると途端に冷める。だから自分でもびっくりした。ライブでいきなり泣くなんて、それが初めてだった。

ソウルフラワーユニオンの柔軟で大きな音や、中川さんのいきいきとした表情からは、音楽が好きで好きでたまらない!っていう感じが、理屈抜きで伝わってきた。最初にせーの!で鳴らしたたった一音に、彼らの音楽への愛情と真摯な姿勢が、全て凝縮されていた。

そのときから僕の音楽に対する考え方、信頼のようなものは確実に変わった。音楽は単なるエンターテイメントではなく、その人の生き方の表出なんだと。そしてそれを他者に伝える、共感性の波のようなものなんだと、そのとき体感したからだ。

素晴らしい音楽や芸術、自然の風景にふれるとき、心の中でこうした変化が稀にある。
奈良美智の絵を初めて生で見たとき、はじめて行ったフジロックで朝まで踊り明かしたとき、地元の長野で音もなく降り積もる雪景色を見ていたとき。それは静かに心の中で起こっている、大げさに言えば革命のようなものなのだ。<sato>

photo by Tomomi Ito